SNSのつぶやきや動画投稿サイトなど、ネットの普及でデコトラの目撃情報やイベントのレポートなどを目にする事が増えた昨今ですが、それと同時に「ドルフィンのマニ割りが~~」とか「V8のマニ割りが~~」といった不自然な内容を書いている人がチラホラ見受けられるようになってきました。
デコトラのみならずトラックのファン層が全体的に低年齢化し、あの『ビトビトビト・・・』『ドドドド・・・』『ビュルビュルビュル・・・』というトラック独特のマフラーサウンドは全てマニ割りによる物だという誤解を招いている事も、この不自然な書き込みが増えている原因なんだろうなと私は思っています。
今回はその中でも特に誤解を招いていると思われる『マニ割り』と『ダブルマフラー』に焦点を当てて解説していきたいと思います。
これらは共にデコトラのマフラー用語なのですが、これらの正しい知識を知っているだけでネットへの書き込みの際や仲間内で会話する際などの謎の不自然さが解消されます。
1.そもそも『マニ割り』って何なの?
エンジンの排気バルブ側に付いているマニホールド(集合管)の事をエキマニ(エキゾースト・マニホールド)と言います。
四気筒エンジンには4つ、六気筒エンジンなら6つ有るシリンダー(燃焼室)から吐き出される排気ガスを、一本の排気管に合流させてやる働きをする部品ですね。
直四エンジン,ノーマルマフラー
はい、解説用に簡単な概要図を用意しました。(絵が雑なのは許してくださいw)
このエキマニを四気筒エンジンならエキマニを3対1、六気筒なら5対1となるようにカットし、鉄板で作った盲蓋を溶接します。
こうして二分割したエキマニに純正以外の二つ目の排気管を取り付ける加工を『マニ割り』と呼びます。
純正の排気管と消音器のタイコの事をそれぞれ「メインパイプ」と「親タイコ」と呼び、またマニ割り加工により追加された排気管とタイコを「サブパイプ」と「子タイコ(単発タイコ)」と呼びます。
直四エンジン,マニ割りWマフラー
なぜわざわざこの様な加工を行うのかについては諸説ありますが、東映映画『トラック野郎』全盛期の時代のデコトラで様々なマフラーサウンドが考案されていた際、直列エンジンのトラックでV8エンジンの様なサウンドを再現するために考案されたという説が最も有力です。
V8エンジン,ノーマルマフラー
同じ用にアメ車のアフターパーツでも『スプリットヘッダー』というエキマニを分割し、排気管を複数取り出せるようにした部品が市販されています。
2.じゃぁ『ダブルマフラー』ってのは何?
基本的には消音器のタイコを2本抱いているレイアウト全般を指す言葉なのですが、デコトラのダブルマフラーと一言で言っても、いくつかの種類があります。
以下でざっくりと4種類のダブルマフラーを解説していきます。
①タイコより後ろを2本に分岐し、出口付近の排気管だけ2本出しになっているマフラー(シングル2本出し)
シングルW出し
タイコはシングルのままで出口のみ分岐させた物を「シングル2本出し」若しくは「シングルW出し」と言います。
これはそもそもタイコがシングルなので厳密にはダブルマフラーではありませんが、サイドバンパーから覗くマフラー出口部分のみを見て判断した際に間違えやすいのであえて載せました。
乗用車などでも「デュアルマフラー」「2本出しマフラー」という名前でおなじみの形式です。
②タイコより前の排気管を2本に分岐し、タイコを2本抱かせたダブルマフラー(Wマフラー)
直四エンジン,Wマフラー
マニを割らずに排気管だけを分岐させ、タイコのみをダブルで抱かせる形式で、デコトラ業界におけるダブルマフラーというと通常はこの形式を指します。
2本あるタイコの種類を変えたり、タイコの容量やテールパイプの取り回しを工夫することで排気ガスの圧力や流速を変えて音の変化を楽しむことも出来ます。
楽器に例えるなら管楽器の二重奏といったところでしょうか。
③マニ割り加工でエキマニを2本に分割したダブルマフラー(マニ割りWマフラー)
直四エンジン,マニ割りWマフラー
最近はマニ割りという単語が定着してしまい、あまりダブルマフラーとは呼ばれなくなってきている印象がありますが、マニ割りもダブルマフラーの一種です。
こちらもタイコの種類やテールパイプの取り回し次第で音が変わります。
通常のダブルマフラーと異なるのは、単発側のタイコの排気音が歯切れのよい断続音となることです。
④V8ディーゼルエンジンで片バンクずつ排気管を取り回したもの(V8Wマフラー)
V8エンジン,Wマフラー1
V8エンジンの場合も同様、上の図のように片バンクごとにタイコに接続することでダブルマフラー化する事ができます。
このレイアウトにした場合、排気音が直列エンジンをマニ割りした時の断続音に似た音が出ることから最近では『V8エンジンのマニ割り!』と誤解する人が大勢いますが、基本的にV型エンジンはマニ割りしません(笑)
これは旧式のいすゞ車に多いV10やV12の場合でも同じです。
3.まとめ
『マニ割り』とは、元々V8ディーゼルエンジンのエキゾーストサウンドを直列エンジンで再現しようとしたことが起源で、エンジンのエキマニを「3対1」や「5対1」の割合で二分割になるよう溶接し、こうして二分割にしたエキマニに純正以外の二つ目の排気管を取り付ける加工を『マニ割り』と呼ぶ。
純正の排気管と消音器のタイコの事をそれぞれ「メインパイプ」と「親タイコ」と呼び、またマニ割り加工により追加された排気管とタイコを「サブパイプ」と「子タイコ(単発タイコ)」と呼ばれる。
『ダブルマフラー』とは、基本的には消音器のタイコを2本抱いているマフラーレイアウト全般を指す言葉で、デコトラのダブルマフラーには「シングル2本出し」「Wマフラー」「マニ割りWマフラー」「V8Wマフラー」などいくつもの種類がある。
また、これらマニ割りやダブルマフラーなどは、取り付けるタイコの種類や配管の長さなど取り回しによっても音が変化する。
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