以前の記事でデコトラやバニング、アメ車などの直列エンジン車で行われる”マニ割り”や、”ダブルマフラー”についての解説を行いました。
最もポピュラーなマニ割りの割り方としては、4気筒車では3対1だし、6気筒車では5対1が基本ですよね!
そして稀に6気筒車でも4対2なんてのもあるし、アメ車の直6だと3対3、軽トラなど3気筒車では2対1のマニ割りというパターンも有ります。
前回のおさらいですが、元々複数あるシリンダの排気ガスをエキマニで一本に合流させる『集合管』になっているものを、分割加工を行う事で意図的に排気脈動の音を出そうとするのがマニ割りでしたね。
今回は、どのパターンの割り方が最もV8エンジンの音に近づけるのかについて、車に詳しくない人にも理解しやすいよう、なるべく解り易い言葉と、僕が考案したチャート図示を使って論理的に解説してみたいと思います!
①そもそもV8エンジンのドロドロ音、ドコドコ音は何故鳴るのか?
V8エンジンのドロドロ音や、Wマフラー化した際のドコドコ音の正体。
これは、クロスプレーンのクランクシャフトを有するエンジン構造と、各シリンダの点火順序に由来するものです。
こちらの図は、いすゞ自動車のニューパワーZや810等に搭載されていたV8エンジン『8P系』のクランクシャフトです。(※いすゞ自動車のパーツカタログより一部引用)
軸方向から見ると、クランクピンが90度に交わっているクロスプレーンになっています。
点火順序は①⑧④③⑥⑤⑦②…となっており、これを左右バンクごとにチャートに整理して見てみると
右バンク:●⑧④●⑥●●②…
左バンク:①●●③●⑤⑦●…
この様になります。
つまり、片バンクだけを見ると『ドッ ドッ ドドッ 』というリズムで不規則に断続排気している事が解りますね。
これがV8クロスプレーン特有のドロドロ音や、ドコドコ音の正体です。
後はこれに左右バンクを繋ぐYパイプやXパイプ、Wマフラーであれば左右にあるフロントパイプの取り回し、接続されるタイコなどの条件が加わる事で音色が変わる訳です。
②直列エンジンを3対1、5対1で割った場合の音はこうなる!
V8と同様に、直列4気筒や、直列6気筒のマニ割りについてもチャートで説明します。
まず、2トン車やサンバーなど一部の軽自動車に採用されている直列4気筒です。
今回は、自動車用で一般的な点火順序①③④②の物で説明します。
(※①②④③の物でも、チャートに起こすと解りますが、同じ結果になります。)
直4で3対1のマニ割りをした場合は
子:①●●●…
親:●③④②…
といった具合です。
続いて4トン車や、最近の10トン車で多い直列6気筒の場合です。
ポピュラーな5対1のマニ割りであれば以下のチャートとなります。
子:①●●●●●…
親:●⑤③⑥②④…
ここに例えばTYマフラーのタイコを付けてやることで音色が付き
子:『ピッ ピッ 』
親:『 ビュルルルル ビュルルルル』
といった具合で、これが実際のエンジン回転のサイクルで回ることでマニ割りWマフラーのあの音が奏でられる訳ですね。
③直6の4対2や、アメ車の3対3スプリッドヘッドの音は?
続いて少しマイナー(?)、直列6気筒を4対2で割った場合です。
子:①●●●②●…
親:●⑤③⑥●④…
親側のチャートだけを見ると、少しV8に近い気がしますね。
(実際の音がどうなるのか、僕は聞いたことが無いのですが…)
続いて、アメ車のスプリッドヘッド(スプリットヘダース)なんかで見られる3対3です。
子:①●③●②●…
親:●⑤●⑥●④…
親と子が交互に排気する奇麗なチャートになりましたね。
親と子を集合させれば、セルシオやフェラーリのV型みたいな音になりそうです(?)し、
逆にWマフラー化すれば、昔のスバル水平対向6気筒みたいになるかもしれません(?)。
④軽トラのマニ割りの場合の音は?
では、最後に軽トラの直列3気筒の2対1のマニ割りの場合です。
子:①●●…
親:●③②…
チャートの1サイクルも他のエンジンより短いし、回転数もディーゼルに比べて高いので軽トラ割りのあのハイテンポな音になるという訳ですね。
⑤単発を取り出す位置によって音は変わるのか?
これもたまに話題に上ると思うのですが、チャートにしてみると答えはすぐに解ります。
先ほどの直4を例にすると、1番シリンダーを子にしても、4番シリンダーを子にしてもチャートの並び…というか排気脈動のリズムは同じなんですよね!
【1番を子にした場合】
子:①●●●…
親:●③④②…
【4番を子にした場合】
子:●●④●…
親:①③●②…
車によってオルタネータやEGRの位置の違い、荷台架装物の位置の都合など、色々と配管のレイアウトを変えると思いますが、個体差などを考慮しなければ理論上は同じ結果になるという事です。
⑥まとめ
今回の記事は如何だったでしょうか?
マニ割りでV8ダブルマフラーの音は完全に再現できないにせよ、チャートを用いて”見える化”すれば色々と伝わりやすかったのではないでしょうか?
個人的には直6の4対2割が一番V8っぽいチャートに見えるのですが、実際にやっている人が居たらぜひコメントを残してくださると嬉しいです!
マフラーは理論的な話はできても実際に作ってみないと判らない点が多いので奥が深いですよね。